Starting point
請求を出すことと、入金されることは別の話
請求書を送った時点で、仕事はひと区切りついた感覚になります。数字は売上に立ち、画面のうえでは取引は終わったように見えます。けれど、そこに書かれた金額が実際に口座へ入ってくるのは、まだ先の話です。出すことと、戻ってくることのあいだには、思っているより長い時間があります。
卸やサービス業のように掛けで取引する現場では、請求は次々に積み上がっていきます。一件ずつ「これは入金されたか」を追いかけ続けるのは、案外むずかしいものです。新しい売上のほうに目が向き、過去の請求は記憶の奥へ沈んでいきます。そうして、入金されていない一件が、誰にも気づかれないまま静かに居座ります。
送った請求がきちんと相手に届いているか、という受領の話とは少し違います。ここで気にしたいのは、届いたその先、お金が戻ってきているかどうかです。請求=入金、とつい同じものとして扱ってしまう。その当たり前のずれを、入口に置いておきます。
The structure
売掛の危なさは、金額ではなく時間に出る
売掛の一覧を金額の大きい順に眺めても、本当に危ない一件は見えてきません。同じ10万円でも、先週出した請求と、半年前に出したまま戻ってこない請求では、意味がまるで違います。前者はただ待っているだけ。後者は、もしかすると焦げ付きかけているのかもしれません。金額という物差しは、その差を映してくれません。
要するに、売掛の危なさは金額ではなく、どれだけ時間が経ったかに出ます。
そこで、一件ずつを「請求してから何日たったか」、つまり滞留日数で区切ってみます。30日以内、60日以内、それより古いもの。三つの区分に分けるだけで、景色が変わります。古い区分に入っているものほど、相手の事情が変わったり、こちらの記憶が薄れたりして、回収しづらくなっていきます。金額の大小ではなく、時間の経ち具合が、追うべき相手を教えてくれます。
この「時間で見る」感覚は、言葉で説明するより手で動かすほうが早く飲み込めます。次の実演で、今日を少しずつ進めながら、売掛がどう色を変えていくかを見てみてください。
Live model
回収の滞留シミュレーション
架空のサンプルとして、5件の売掛を並べています。金額と請求日はそれぞれ固定です。スライダーで「今日」を進めると、各売掛の滞留日数がいっせいに増え、古いものから順に右の区分へ移っていきます。督促ラインを越えた件数と金額の合計は、上の数字に表れます。タブで見たい区分だけに絞ることもできます。
売掛エイジング表
| 滞留区分 | 件数 | 金額合計 |
|---|---|---|
| 30日以内 | 2件 | ¥214,000 |
| 60日以内 | 2件 | ¥292,000 |
| それ以上 | 1件 | ¥175,000 |
| 督促ライン超え(60日超) | 1件 | ¥175,000 |
色の濃さは、商品や取引先を区別するための名札ではありません。回収の危なさそのものを映しています。古い区分ほど赤が濃くなり、督促すべき先が自然と浮かび上がります。各区分には ✓ / △ / ✕ と一言を添えて、色と言葉の両方で同じことを伝えています。
Closing
時間という物差しを、当ててみる
売掛を「合計でいくら」だけで見ているうちは、どれが焦げ付きかけているのかは見えてきません。総額はただ大きく見えるだけで、そのなかのどの一件を追えばいいのかは教えてくれません。
そこに時間という物差しを当てると、景色が変わります。同じ未入金でも、先週のものと半年前のものははっきり分かれ、いま手を打つべき一件が静かに浮かんできます。金額の順に並べ直す必要はありません。ただ、どれだけ時間が経ったかで見る。それだけで、後回しになっていた回収に、もう一度ピントが合います。