構造の人 LabLab

Cash in Structure · Field Note 15

「請求したつもり」が回収できていない — 売掛を時間で見る

請求書は出した。けれど、入金されたかどうかを一件ずつ追えているとは限りません。売上が立った安心感で、回収はつい後回しになります。気づくと、何か月も前の請求が未入金のまま残っている。そんなことが静かに起きます。

構造の人 Lab / 読了の目安 6分 / 触れる実演つき

Starting point

請求を出すことと、入金されることは別の話

請求書を送った時点で、仕事はひと区切りついた感覚になります。数字は売上に立ち、画面のうえでは取引は終わったように見えます。けれど、そこに書かれた金額が実際に口座へ入ってくるのは、まだ先の話です。出すことと、戻ってくることのあいだには、思っているより長い時間があります。

卸やサービス業のように掛けで取引する現場では、請求は次々に積み上がっていきます。一件ずつ「これは入金されたか」を追いかけ続けるのは、案外むずかしいものです。新しい売上のほうに目が向き、過去の請求は記憶の奥へ沈んでいきます。そうして、入金されていない一件が、誰にも気づかれないまま静かに居座ります。

送った請求がきちんと相手に届いているか、という受領の話とは少し違います。ここで気にしたいのは、届いたその先、お金が戻ってきているかどうかです。請求=入金、とつい同じものとして扱ってしまう。その当たり前のずれを、入口に置いておきます。

The structure

売掛の危なさは、金額ではなく時間に出る

いくつかの請求書が、時間の経過とともに少しずつ色濃く沈んでいき、古いものほど重たく見える様子
同じ金額でも、時間が経つほど重くなります。

売掛の一覧を金額の大きい順に眺めても、本当に危ない一件は見えてきません。同じ10万円でも、先週出した請求と、半年前に出したまま戻ってこない請求では、意味がまるで違います。前者はただ待っているだけ。後者は、もしかすると焦げ付きかけているのかもしれません。金額という物差しは、その差を映してくれません。

要するに、売掛の危なさは金額ではなく、どれだけ時間が経ったかに出ます。

そこで、一件ずつを「請求してから何日たったか」、つまり滞留日数で区切ってみます。30日以内、60日以内、それより古いもの。三つの区分に分けるだけで、景色が変わります。古い区分に入っているものほど、相手の事情が変わったり、こちらの記憶が薄れたりして、回収しづらくなっていきます。金額の大小ではなく、時間の経ち具合が、追うべき相手を教えてくれます。

この「時間で見る」感覚は、言葉で説明するより手で動かすほうが早く飲み込めます。次の実演で、今日を少しずつ進めながら、売掛がどう色を変えていくかを見てみてください。

Live model

回収の滞留シミュレーション

架空のサンプルとして、5件の売掛を並べています。金額と請求日はそれぞれ固定です。スライダーで「今日」を進めると、各売掛の滞留日数がいっせいに増え、古いものから順に右の区分へ移っていきます。督促ラインを越えた件数と金額の合計は、上の数字に表れます。タブで見たい区分だけに絞ることもできます。

売掛エイジング表

基準日時点の滞留区分(5件・架空のサンプル)
滞留区分件数金額合計
30日以内2件¥214,000
60日以内2件¥292,000
それ以上1件¥175,000
督促ライン超え(60日超)1件¥175,000
+0日
督促ライン超え(60日超) 1件 / 合計 ¥175,000

色の濃さは、商品や取引先を区別するための名札ではありません。回収の危なさそのものを映しています。古い区分ほど赤が濃くなり、督促すべき先が自然と浮かび上がります。各区分には ✓ / △ / ✕ と一言を添えて、色と言葉の両方で同じことを伝えています。

Closing

時間という物差しを、当ててみる

売掛を「合計でいくら」だけで見ているうちは、どれが焦げ付きかけているのかは見えてきません。総額はただ大きく見えるだけで、そのなかのどの一件を追えばいいのかは教えてくれません。

そこに時間という物差しを当てると、景色が変わります。同じ未入金でも、先週のものと半年前のものははっきり分かれ、いま手を打つべき一件が静かに浮かんできます。金額の順に並べ直す必要はありません。ただ、どれだけ時間が経ったかで見る。それだけで、後回しになっていた回収に、もう一度ピントが合います。