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Pricing in Structure · Field Note 16

その値引き、ほんとうの代償は — 利益で見る価格の話

セールをすると売上は気持ちよく伸びます。けれど月末の利益は思ったほど増えず、ときにはむしろ減る。その違和感は、値引きが「どこから引かれているか」が見えにくいところから来ています。

構造の人 Lab / 読了の目安 5分 / 触れる実演つき

The pleasant rise

売れたのに、増えない

値引きやセールをすると、売上の数字は気持ちよく伸びていきます。レジが何度も鳴って、棚が空いていくのは、それだけで手応えのある光景です。たくさん売れた、という実感も確かに残ります。

けれど月末に利益を見ると、思ったほど増えていないことがあります。ときには、あれだけ売れたはずなのに、前の月より減っていることさえあります。「売れたのに、どうして」という小さな違和感が、静かに残ります。

この違和感は、たいてい値引きの分が「どこから引かれているのか」が見えにくいところから来ています。売値を少し下げただけのつもりでも、その数字は売上の総額から引かれるのではなく、別の場所から差し引かれています。

What gets cut

値引きは、利益から引かれる

商品の価格の帯から、薄い利益の層だけがそっと削り取られ、その小さな削りが大きな穴のように見える様子
値引きの分は、売上ではなく利益から出ています。

値引きの怖さは、利益率の薄さと掛け算で効いてきます。商品の売値の中身を分けてみると、その大半は仕入れや材料といった原価で、手元に残る利益はそのうちの薄い一層にすぎません。

値引きをしたとき、削られるのは原価の側ではありません。原価は値引きに付き合ってくれないので、減る分はまるごと、いちばん薄いこの利益の層から出ていきます。だからこう言い切れます。

要するに、値引きは売上ではなく利益そのものを削ります。だから元の利益を取り戻すには、想像よりずっと多く売らなければなりません。

利益率が薄い商品ほど、この削られ方は深くなります。たとえば利益率が20%の商品を5%引くと、減るのは売値の5%でも、利益の側から見れば四分の一が一度に消える計算です。「5%引き」という軽い言葉の裏で、利益はそれよりずっと大きく動いています。

Feel the seesaw

触れる:値引きの損益シーソー

では、その値引きで元の利益を取り戻すには、いまより何%多く売ればよいのか。頭の中で追うより、動かして見たほうが早いはずです。下の二つのスライダーで、元の利益率と、値引き率を動かせます。

20%
5%

元の利益を取り戻すには

いまより 33% 多く

売る必要があります

横軸は値引き率、縦軸は元を取るのに必要な追加販売数です。帯の色が変わるところから先は、いまの倍より多く売らないと元が取れません。

動きのある実演が使えないときのために、代表的な組み合わせを表にしておきます。数字は「元の利益を取り戻すのに、いまより何%多く売る必要があるか」です。

必要な追加販売数(利益率 × 値引き率)
値引き率\利益率利益率 10%利益率 20%利益率 30%
5% 引き+100%+33%+20%
10% 引き取り戻せない+100%+50%
20% 引き取り戻せない取り戻せない+200%

値引き率を少しずつ上げてみると、必要な追加販売数はある所から急に立ち上がります。利益率を薄いほうへ寄せるほど、その立ち上がりは手前に来ます。必要な販売数が「いまの倍」を超える帯に入ると色が変わり、そこから先がその値引きの割に合う・合わないの分かれ目です。

The translation

「何%引くか」を「何個多く売るか」に

値引きを「売上を増やす手」としてだけ見ていると、その裏で利益がどれだけ削れているかは見えないままです。数字が伸びる側だけが目に入って、薄い層が削られていく側は静かに進みます。

「何%引くか」を「元を取るのに何個多く売るか」に翻訳すると、その値引きが割に合うのかどうかが、決める前に分かります。同じ5%でも、利益率しだいで意味はまるで変わります。割引の大きさそのものより、その後ろにある利益の薄さのほうが、答えを先に決めています。