構造の人 LabLab

Structure at Work · Field Note 07

「要するに、ここが詰まっている」— 絡まった業務を構造で読み解く

誰も全体を説明できなくなった業務でも、流れを一度ぜんぶ広げて数えてみると、詰まりは決まって一か所に出てきます。架空の梱包資材卸の受注から入金までを題材に、「ここが詰まっている」を一文にするまでの手順をたどります。

構造の人 Lab / 読了の目安 7分 / 触れる実演つき

How It Tangles

なぜ業務は「説明できない」状態になるのか

業務の手順は、最初から設計図があって組み上がるものばかりではありません。誰かが困った瞬間に一つ手を足し、別の不便が出るたびにまた一つ足す。その繰り返しで、いまの流れは少しずつ育っていきます。

気づけば、同じ数字があちこちの台帳や表に書き写され、どれが本物の元なのかが曖昧になっています。全体のつながりを覚えているのは、たいてい長く担当してきた一人だけ。地図がその人の頭の中にしか残っていない、という状態です。

だから「うちの業務を説明してください」と言われて言葉に詰まるのは、手を抜いてきたからではありません。むしろ、目の前の困りごとに真面目に応え続けた結果として、流れが複雑になっているだけなのです。

The Three Moves

絡まった流れは、三つ数えるとほどける

机に広げた紙の上で、もつれて絡まった業務フローの線の束の中の、一か所だけ団子のように詰まった結び目を、人物が見つけて指さしている様子
絡まって見えても、詰まりは一か所に出る。

ほどく手順は、新しい道具を買い足すことではありません。いま動いている流れを、一度ぜんぶ机の上に広げて見ることから始まります。

一つめは、登場人物と物の流れを描くこと。誰から誰へ、何が渡っていくのかを線でつなぎます。

二つめは、各ステップの隣に「何を受け取り、何を渡すか」を並べること。ただ素通しするだけの工程と、いったん作り直してから次へ渡す工程とが、自然に分かれて見えてきます。

三つめは、同じ数字が何回書き写されるかを数えること。受注の金額、品番、個数——それらが台帳から表へ、表からまた別の表へと移るたびに、転記の回数を一つずつ数えます。これがいちばん効きます。

派手な分析はいりません。数えるだけで、どこに負担が溜まっているのかが、ゆっくり浮かび上がってきます。

Hands-On

触れて、詰まりを浮かび上がらせる

ここからは、架空の梱包資材卸「湘南パッケージ」の受注から入金までを題材にします。受注入力から入金消込まで、七つの工程それぞれに、毎月の作業時間・同じ数字を書き写す回数・担当の人数を持たせてあります(数値はすべて説明用の架空例です)。

「何で数えるか」を切り替えると、選んだ指標の大きい順に工程が並び替わり、濃いバーほど詰まっていることを表します。受注の波(繁忙度)を動かして伸びるのは作業時間だけ、という点もそのまま表れます。波が来れば件数が増えて時間は伸びますが、同じ数字を何回書き写すかや、その工程を何人で担うかは、業務の構造そのもので決まるため季節では動きません。だからこそ、構造で数えた詰まりは、忙しさに左右されない本当の詰まりだと言えます。

数値・社名はすべて説明用の架空例です。

湘南パッケージ・受注→入金の7工程(同じ数字の転記回数が多い順/架空例)

  1. 入金消込:転記6回 / 月16時間 / 担当1人 ← ここが詰まっています
  2. 請求:転記5回 / 月12時間 / 担当1人
  3. 受注入力:転記4回 / 月14時間 / 担当1人
  4. 在庫確認:転記3回 / 月8時間 / 担当2人
  5. 出荷:転記3回 / 月10時間 / 担当2人
  6. 発注:転記2回 / 月5時間 / 担当2人
  7. 入荷:転記2回 / 月6時間 / 担当3人

In Closing

見えれば、半分終わっている

直し方をまだ決めていなくても構いません。「要するに、ここが詰まっている」と一文で言えた時点で、ぼんやりした不安は、手の届く対象に変わります。

そこから先の道具は、後からゆっくり選べます。いまの表計算のまま整え方を変えるのか、小さなアプリに移すのか——順番としては、見えることが先で、手段はそのあとです。

絡まりは、ほどこうと力を入れる前に、まず広げて数えてみる。一か所に出ている結び目さえ見つかれば、いちばん難しいところは、もう越えています。