Where to Start · Field Note 20
何から手をつけるか — デジタル化の効き目を順に見る
「うちもデジタル化を」と言われても、業務は山ほどあって、どこから始めればいいのか決まりません。やりやすさで選ぶと、努力のわりに楽になりません。効き目で順番をつけると、最初の一手で一番大きく変わる場所が見えてきます。
Where to begin
やりやすさと、効き目は別もの
「うちもそろそろデジタル化を」と言われても、目の前の業務は山ほどあって、どこから手をつければいいのか、すぐには決まりません。受注も、在庫も、請求も、問い合わせも、どれも毎日まわっています。
全部を一度に変えることはできませんから、つい、手をつけやすいところから始めてしまいます。道具がそろっている作業や、頼みやすい相手のいる作業は、着手のハードルが低く感じられます。
でも、やりやすさと効き目は、別ものです。始めやすい場所が、一番楽になる場所とはかぎりません。手のつけやすさだけで選ぶと、直したのに現場の負担はあまり変わらない、ということが起こります。
Where the effect comes from
効き目は「手間 × 頻度 × ミス」で決まる
デジタル化が効くかどうかは、その作業の「手間 × 頻度 × ミスの起きやすさ」で決まります。三つのうちどれか一つが小さいと、いくら直しても全体としては効きません。
たとえば、年に一度しかやらない作業を、どれだけ丁寧に自動化しても、一年に一度しか楽になりません。一回の手間が大きく見えても、めったにやらない作業は、順番としては後ろでも困りません。
反対に、毎日、何度も繰り返していて、しかも間違えやすい工程ほど、直したときに一気に楽になります。一回ぶんは小さくても、回数とミスの後始末が積み重なって、現場の重さになっているからです。
要するに、どこから始めるかは、やりやすさではなく効き目で選びます。効き目は、手間と頻度とミスの掛け算に表れます。
Rank by effect
どこから直すと一番効くか、並べて見る
では、いくつかの工程を並べて、効き目の順を見てみます。下の実演には、事務の現場でよくある工程を五つ置いてあります。それぞれに「1回あたりの手間」「月の頻度」「ミスの起きやすさ」のつまみがあり、初期値のままでも、効き目の高い順に棒の長さで並びます。
つまみを動かすと、順位が入れ替わります。手間の大きな作業でも、めったにやらないなら下がり、ひとつひとつは小さくても毎日繰り返す作業は上がってきます。いま一番効く工程は、つねに一番上に名前で示されます。順番が変わる手ごたえは、実演にそのまま表れています。
説明用の架空例です。工程を選び、三つのつまみを動かすと、効き目の順が並び替わります。
| 工程 | 手間 | 頻度 | ミス | 効き目スコア |
|---|---|---|---|---|
| 受注入力 | 8分 | 120回 | 7 / 10 | 6,720 |
| 請求書作成 | 15分 | 40回 | 6 / 10 | 3,600 |
| 問い合わせ対応 | 6分 | 90回 | 5 / 10 | 2,700 |
| 在庫確認 | 5分 | 60回 | 4 / 10 | 1,200 |
| 月次集計 | 30分 | 2回 | 8 / 10 | 480 |
いま一番効くのは 受注入力 です。
Start where it moves most
最初の一手で、一番大きく変わる場所
デジタル化を「手をつけやすいところから」始めると、努力のわりに、現場はあまり楽になりません。着手は進んでいるのに、毎日の負担がそのまま残る、ということが起こります。
効き目で順番をつけると、最初の一手で一番大きく変わる場所が、自然と浮かんできます。それは、いつもなんとなく重いと感じていた工程だったりします。手間と頻度とミスが重なっているところほど、直したときの差が大きく出ます。
どこから直すかが見えていれば、限られた時間と予算を、一番効くところに置けます。最初の一手をどこに打つか——そこが決まると、その先の順番も無理なく続いていきます。