構造の人 LabLab

Where to Start · Field Note 20

何から手をつけるか — デジタル化の効き目を順に見る

「うちもデジタル化を」と言われても、業務は山ほどあって、どこから始めればいいのか決まりません。やりやすさで選ぶと、努力のわりに楽になりません。効き目で順番をつけると、最初の一手で一番大きく変わる場所が見えてきます。

構造の人 Lab / 読了の目安 6分 / 触れる実演つき

Where to begin

やりやすさと、効き目は別もの

「うちもそろそろデジタル化を」と言われても、目の前の業務は山ほどあって、どこから手をつければいいのか、すぐには決まりません。受注も、在庫も、請求も、問い合わせも、どれも毎日まわっています。

全部を一度に変えることはできませんから、つい、手をつけやすいところから始めてしまいます。道具がそろっている作業や、頼みやすい相手のいる作業は、着手のハードルが低く感じられます。

でも、やりやすさと効き目は、別ものです。始めやすい場所が、一番楽になる場所とはかぎりません。手のつけやすさだけで選ぶと、直したのに現場の負担はあまり変わらない、ということが起こります。

Where the effect comes from

効き目は「手間 × 頻度 × ミス」で決まる

いくつもの作業がてんびんに乗せられ、それぞれ重さ(効き目)が違っていて、一番重いものが大きく傾いている様子
効き目は、工程によって大きく違います。

デジタル化が効くかどうかは、その作業の「手間 × 頻度 × ミスの起きやすさ」で決まります。三つのうちどれか一つが小さいと、いくら直しても全体としては効きません。

たとえば、年に一度しかやらない作業を、どれだけ丁寧に自動化しても、一年に一度しか楽になりません。一回の手間が大きく見えても、めったにやらない作業は、順番としては後ろでも困りません。

反対に、毎日、何度も繰り返していて、しかも間違えやすい工程ほど、直したときに一気に楽になります。一回ぶんは小さくても、回数とミスの後始末が積み重なって、現場の重さになっているからです。

要するに、どこから始めるかは、やりやすさではなく効き目で選びます。効き目は、手間と頻度とミスの掛け算に表れます。

Rank by effect

どこから直すと一番効くか、並べて見る

では、いくつかの工程を並べて、効き目の順を見てみます。下の実演には、事務の現場でよくある工程を五つ置いてあります。それぞれに「1回あたりの手間」「月の頻度」「ミスの起きやすさ」のつまみがあり、初期値のままでも、効き目の高い順に棒の長さで並びます。

つまみを動かすと、順位が入れ替わります。手間の大きな作業でも、めったにやらないなら下がり、ひとつひとつは小さくても毎日繰り返す作業は上がってきます。いま一番効く工程は、つねに一番上に名前で示されます。順番が変わる手ごたえは、実演にそのまま表れています。

説明用の架空例です。工程を選び、三つのつまみを動かすと、効き目の順が並び替わります。

効き目の高い順(初期値のとき)
工程手間頻度ミス効き目スコア
受注入力8分120回7 / 106,720
請求書作成15分40回6 / 103,600
問い合わせ対応6分90回5 / 102,700
在庫確認5分60回4 / 101,200
月次集計30分2回8 / 10480

Start where it moves most

最初の一手で、一番大きく変わる場所

デジタル化を「手をつけやすいところから」始めると、努力のわりに、現場はあまり楽になりません。着手は進んでいるのに、毎日の負担がそのまま残る、ということが起こります。

効き目で順番をつけると、最初の一手で一番大きく変わる場所が、自然と浮かんできます。それは、いつもなんとなく重いと感じていた工程だったりします。手間と頻度とミスが重なっているところほど、直したときの差が大きく出ます。

どこから直すかが見えていれば、限られた時間と予算を、一番効くところに置けます。最初の一手をどこに打つか——そこが決まると、その先の順番も無理なく続いていきます。