AI Agent Design · Field Note 09
AIに業務を任せるとき、つまずきは道具選びより前にあります。何を渡し、何を自分が握るか——入力・判断・責任の3つの境界線を、手を動かしながら確かめます。
Why Extremes Fail
AIに業務を任せられる範囲は、年々広がっています。その勢いを前にすると、判断は極端へ振れがちです。「もう全部任せてしまおう」と丸投げするか、逆に「やはり人がやらないと危ない」と全否定するか——どちらか一方へ寄ってしまいます。
けれど、丸投げは抜け落ちや暴走を生み、全否定はAIの速さをまるごと捨てます。AIを業務に正しく、無理なく安全に組み込むには、二択ではなく仕分けが要ります。AIの得意な作業と、人が手放してはならない役割を、一つずつ線で分けていく。その線の引き方を持っているかどうかが、うまくいくかどうかを分けます。
線は感覚で引くものではありません。引くべき場所は決まっていて、しかも一本ではありません。役割の違う3本を順番に引くと、丸投げでも全否定でもない置きどころが見えてきます。
Three Boundaries
仕分けの線は、役割の違う3本です。入力・判断・責任の順に引いていくと、どの業務も置き場所が定まります。
AIに作業を頼むには、材料を渡します。請求データや在庫の記録のように渡してよいものと、社外秘や個人情報のように渡してはいけないものを、最初に分けます。ここが曖昧だと、便利さと引き換えに漏れの危険を抱え込みます。
下書きや集計のような「決めなくてよい作業」は委ねられます。一方で、金額や可否のように結果が大きく動く決定は、人の側に残します。任せる判断と握る判断の境目を、ここで引きます。
たとえAIが作業の大半をこなしても、「これでよい」と最後に署名するのは人です。何かあったときに説明できる立場を誰が持つのかを、はっきりさせます。ここを曖昧にしたまま任せると、責任の所在が消えます。
3本の線は、ときに重なり合います。次の仕分けボードで、代表的な業務を実際に振り分けてみると、この3つの境界がどう効いてくるかが、操作のそばに表れます。
Try It
代表的な5つの業務を、3つのボタン——AIに任せる/人がレビュー/人が握る——のどれかで振り分けます。押すと、その判断が境界に合っているか(理由つき)がカードの下に表れます。同じカードでも、押すボタンが変わればコメントは変わります。業務名はすべて説明用の架空例です。
どれかを押すと、その下に判定とコメントが出ます。何度でも押し替えられます。
Tools Come Last
3つの境界を引き終えてから、ようやく道具の話になります。表計算で十分なのか、専用のAIに任せるのか、人手で回すのか——それはプロセスの最後に決めることです。
順番が逆になると、つまずきます。便利そうな道具から入り、後になって「これは任せてよかったのか」と悩み始める。境界が引けていないまま道具を選ぶと、その道具の機能のほうへ、業務が引きずられていきます。
境界が明文化できていれば、どの道具を選んでも一定の安全は保てます。入力・判断・責任のどこを人が握るかが決まっていれば、道具はその枠の中で働くだけだからです。境界が引けていれば、道具は後から選べる。まず線を引くことが、スタートラインです。