構造の人 LabLab

Structure at Work · Field Note 11

その仕事、あの人が休んだら止まりますか — 属人化を地図にする

「その作業、あの人がいないと進まない」。誰かが長く休んだ朝に、はじめて気づくことがあります。属人化は、悪意でもサボりでもなく、日々の業務を真面目に積み重ねた結果として、静かにできあがります。タスクと担当を一枚の地図に置くと、どの業務が「その人が休んだら止まる」単一障害点なのかが、輪郭を持って見えてきます。

構造の人 Lab / 読了の目安 5分 / 触れる実演つき

Why it happens

属人化は「悪意」ではなく構造で起きる

大量の書類やカードを一人だけで抱え込む人物に、すべての仕事の線が集中している。周りに立つ二人は手が空いているのに、手を出せずにいる様子。
その人にだけ、線が集まっている。

はじまりは、たいてい小さな困りごとへの対応でした。急ぎの案件が来たとき、たまたま手の空いていた人が引き受ける。そのやり方でうまく回ったので、次も同じ人に頼む。こうした継ぎ足しが少しずつ重なるうちに、ある業務は「その人のやり方」として固まっていきます。

誰かがサボったわけでも、隠したわけでもありません。むしろ、目の前の仕事を落とさずに回そうとした真面目さの積み重ねです。ただ、一つひとつの判断は見えても、「全体として、いまどこが危ういのか」は、渦中にいるほど見えにくくなります。属人化が困るのは、止まってはじめて気づくところにあります。

How to map it

見える化の手順

危うさを見るのに、特別な道具は要りません。順番は、洗い出して、置くだけです。

まず、チームの業務をタスクとして洗い出します。「受注対応」「見積作成」「コーディング」のように、担当が替われる単位でならべるのがちょうどよい粒度です。次に、それぞれのタスクを「いま誰ができるか」で見て、できるなら○、できないなら - を、一枚のマトリクスに置いていきます。

置き終えると、ひとつの基準で全体が読めるようになります。できる人が一人だけの業務——それが、その人が休んだら止まる単一障害点です。複数名がカバーできていれば、ひとまず止まりません。これだけで、漠然としていた不安に「場所」が与えられます。

The map, in your hands

触れる属人化マップ

言葉だけだと、まだ少し遠いかもしれません。下のマトリクスは、架空の制作会社(3名)の業務を置いたものです。セルを押すと「できる/できない」が切り替わり、できる人が一人だけになった業務は赤く灯ります。上の件数も一緒に動きます。自分のチームならどうなるか、指でならべ替えてみると、その変化はマトリクスにそのまま表れます。

単一障害点 5 件 / いま誰か一人が休むと止まる業務

タスク Aさん
ディレクター
Bさん
デザイナー
Cさん
エンジニア
できる人数
受注対応・窓口 2
見積作成 1
デザイン制作 1
入稿データ作成 2
コーディング 1
JS・ロジック実装 1
請求・入金管理 1
サーバー公開・保守 2
赤=その人しかできない(単一障害点) 白=複数名がカバー グレー=遂行できる人がいない

セルの○/- を押すと「できる人」が変わり、できる人が一人だけの行が赤く、誰もできない行がグレーになります。社名・氏名・数値はすべて説明のための架空例です。

Where to start

見えれば、誰から手を打つか決まる

マトリクスが一枚描けると、「なんとなく不安」だった感覚が、具体的な言葉に変わります。「Cさんのコーディングと、Aさんの請求が、いまの単一障害点だ」というように、危うさが地図の上に場所を持ちます。

そこまで来れば、どこから手をつけるかは自然と決まります。赤がいちばん痛い業務から、二人目が動けるように手順を一つ残してみる。隣の席の人と一度だけ並走してみる。対策はいくつもありますが、それらはすべて手段にすぎません。順番を選べるようになったこと自体が、いちばんの前進です。

見えれば、半分は終わっています。