Why it happens
属人化は「悪意」ではなく構造で起きる
はじまりは、たいてい小さな困りごとへの対応でした。急ぎの案件が来たとき、たまたま手の空いていた人が引き受ける。そのやり方でうまく回ったので、次も同じ人に頼む。こうした継ぎ足しが少しずつ重なるうちに、ある業務は「その人のやり方」として固まっていきます。
誰かがサボったわけでも、隠したわけでもありません。むしろ、目の前の仕事を落とさずに回そうとした真面目さの積み重ねです。ただ、一つひとつの判断は見えても、「全体として、いまどこが危ういのか」は、渦中にいるほど見えにくくなります。属人化が困るのは、止まってはじめて気づくところにあります。
How to map it
見える化の手順
危うさを見るのに、特別な道具は要りません。順番は、洗い出して、置くだけです。
まず、チームの業務をタスクとして洗い出します。「受注対応」「見積作成」「コーディング」のように、担当が替われる単位でならべるのがちょうどよい粒度です。次に、それぞれのタスクを「いま誰ができるか」で見て、できるなら○、できないなら - を、一枚のマトリクスに置いていきます。
置き終えると、ひとつの基準で全体が読めるようになります。できる人が一人だけの業務——それが、その人が休んだら止まる単一障害点です。複数名がカバーできていれば、ひとまず止まりません。これだけで、漠然としていた不安に「場所」が与えられます。
The map, in your hands
触れる属人化マップ
言葉だけだと、まだ少し遠いかもしれません。下のマトリクスは、架空の制作会社(3名)の業務を置いたものです。セルを押すと「できる/できない」が切り替わり、できる人が一人だけになった業務は赤く灯ります。上の件数も一緒に動きます。自分のチームならどうなるか、指でならべ替えてみると、その変化はマトリクスにそのまま表れます。
単一障害点 5 件 / いま誰か一人が休むと止まる業務
| タスク | Aさん ディレクター |
Bさん デザイナー |
Cさん エンジニア |
できる人数 |
|---|---|---|---|---|
| 受注対応・窓口 | 2名 | |||
| 見積作成 | 1名 | |||
| デザイン制作 | 1名 | |||
| 入稿データ作成 | 2名 | |||
| コーディング | 1名 | |||
| JS・ロジック実装 | 1名 | |||
| 請求・入金管理 | 1名 | |||
| サーバー公開・保守 | 2名 |
セルの○/- を押すと「できる人」が変わり、できる人が一人だけの行が赤く、誰もできない行がグレーになります。社名・氏名・数値はすべて説明のための架空例です。
Where to start
見えれば、誰から手を打つか決まる
マトリクスが一枚描けると、「なんとなく不安」だった感覚が、具体的な言葉に変わります。「Cさんのコーディングと、Aさんの請求が、いまの単一障害点だ」というように、危うさが地図の上に場所を持ちます。
そこまで来れば、どこから手をつけるかは自然と決まります。赤がいちばん痛い業務から、二人目が動けるように手順を一つ残してみる。隣の席の人と一度だけ並走してみる。対策はいくつもありますが、それらはすべて手段にすぎません。順番を選べるようになったこと自体が、いちばんの前進です。
見えれば、半分は終わっています。