構造の人 LabLab

Edit It Yourself · Field Note 05

つくり直さず、直す — AIに骨格を、数字はデータから引く

毎月の資料を一から組み直し、先月の数字を今月の数字へ打ち替える。ひと言直したいだけなのに、ファイル全体と向き合ってしまう。その「つくり直し」の正体をほどいて、賢い分担に置き換えてみます。

構造の人 Lab / 読了の目安 7分 / 触れる実演つき

The Remake Habit

毎月、また一から組み直している

月初めにやってくる資料づくり。先月のファイルを開いて、体裁を整え直し、先月の数字を今月の数字へ手で打ち替えて、どこかずれていないか最初から最後まで目で追っていく。ひと言だけ直したいときでも、結局は一枚のファイル全体と向き合うことになります。

机いっぱいに広げた何枚もの資料に、同じ内容を一枚ずつ手で書き写して少し疲れた様子の人物。
同じ数字を、何枚もの資料へ手で書き写していく。

「資料は毎回つくり直すもの」——いつのまにか、そう感じてしまっているかもしれません。けれど立ち止まると、つくり直しているのは中身ではなく、完成した一枚を毎回ゼロから組み立て直す手つきのほうだと気づきます。隠れている前提は、ひとつ。毎月、まっさらから一枚を組み上げ直している、という前提です。

AI が下書きをまるごと書き上げられる今でも、この手つきは残ります。全部つくり直させても、全部手で打っても、毎月ふりだしに戻る感覚は変わらない。変えたいのは、そこです。

What Stalls

同じ値を、何度も手で書き写している

資料の中には、同じ数字や同じ語が何度も顔を出します。今月の売上は、タイトルにも、本文の一文にも、表のセルにも、まとめの行にも現れる。対象月や主力商品の名前も同じように、あちこちで繰り返されています。

手で直すなら、一箇所変えるたびに、同じ値が出てくる場所をぜんぶ探して、ひとつずつ直していくことになります。三つ直したつもりが四つめが残る。そうして、ひとつの資料の中で数字や言葉が静かに食い違っていきます。直し漏れは、不注意というより、この作業のかたちが呼び込むものです。

詰まりの正体を一文で言い切ると——同じ値が、出どころ(ソース)を一つにまとめられないまま、何箇所にも手で書き写されている。これだけです。

Hands-on · Source & Echo

一箇所直すと、ぜんぶ直る

小さな月次レポート(架空)を用意しました。対象月・主力商品・今月の売上が、タイトルや本文、表、まとめに重複して現れています。左の出どころを一つ直すと、その値が出てくる場所が、右のレポートでいっせいに揃います。欄に触れると、繋がっている先がそのまま光ります。

Live demo — 架空のサンプル

出どころ(ソース)を直す

4か所に出ています
3か所に出ています
3か所に出ています

月次レポート(社内向け・架空)

6月度 売上まとめ

6月は主力商品「焙煎ブレンド」が伸び、売上は 1,234,567 円となりました。

対象月主力商品売上(円)
6月 焙煎ブレンド 1,234,567

以上、6月度の「焙煎ブレンド」実績(1,234,567 円)をご報告します。

手作業なら、同じ値を出てくる箇所ぜんぶ探して直し、しかも直し漏れればその場でずれます。ここでは出どころを一つ直すだけで、同じ値の出る全箇所がいっせいに揃います。数値・商品名はすべて説明用の架空例です。

売上の欄に打つのは数字だけ。レポート側では三桁区切りのカンマが付いて読みやすく整います。同じものを何度も手で打つのではなく、出どころから引いてくる——それが、目の前で起きています。

Skeleton & Touch-ups

骨格はAIに、日々の直しは自分の手で

ここで分担が見えてきます。骨格——体裁と、「同じ値の出どころを一つにまとめる結び付け」——は、最初に一度だけ AI につくらせる。難しくて時間のかかる部分を、一回で済ませる場所です。

そのあとの日々の直しは、出どころを一つ手で直すだけ。あとは散らばった全箇所が勝手に揃うので、直し漏れでずれることがありません。毎回ゼロから組み直すより、はるかに速くて安く済みます。

「毎回つくり直す」から「出どころを一つ直す」へ。視点がそこへ移ると、毎月の資料仕事は、重い再制作ではなく、ひと触りの手直しに姿を変えます。

In Closing

つくり直さず、直す

つくり直さず、直す。最初の一度だけ「あとで自分で直せる前提」と「数字はデータから引く」を仕込んでおけば、その先の毎月は軽くなります。

資料が重い再制作から軽い手直しへ変わるのは、AI に全部任せたからでも、全部手で抱えたからでもありません。骨格と日々の直しを、それぞれふさわしい側に置けたからです。出どころが一つにまとまっていれば、直すのはいつも一箇所で足ります。