構造の人 LabLab

Inside Claude Code · Reading No.02

Claude Code の中身は、分業でできている

Claude Code を使っていると、相手は一人の優秀な開発者のように振る舞います。曖昧な頼みを汲んで、自分で段取りを立て、手を動かす。ところが、その Claude Code が自分自身にかけている指示——システムプロンプトの全文を、抜き出して公開しているリポジトリがあります。読んでみると、一人の天才ではありませんでした。会話を進める本体のループ、役割ごとに仕事を引き受けるサブエージェント、そして27個の道具。中身は、分業するチームです。そして、この分かれ方が分かると、もっとうまく頼むための勘所も見えてきます。

構造の人 Lab / 読了の目安 6分 / 触れる切り替えつき

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The primary source

使っている指示が、そのまま読める

PiebaldAI という作者の claude-code-system-prompts というリポジトリです。Claude Code のコンパイル済みのコードから直接抜き出しているので、推測ではなく実際に動いている指示そのもの。リリースのたびに差分が公開され、v2.0.14 以降の219版分、いつどの指示が変わったかまで追えます。ふだんは表に出ない、Claude Code が自分に出している指示が、そのまま文章で並んでいます。

まずは、使っているときの普段の感覚から始めます。

The plain picture

一人の天才に、見える

使っている間、相手はひとりに見えます。こちらが話しかけ、向こうが考えて、手を動かす。リポジトリがおさえている指示は、最新版(v2.1.191・2026年6月24日)で515。数だけ見ると、平らに積み上がった大きな山です。「多機能なんだな」で終わり、それ以上は見えてきません。

でも、その一つひとつを「何のための指示か」で仕分けると、平らだった山に段がつきます。下のボタンで、役割ごとに畳み直してみます。

Flat, then opened

役割で開くと、三つに分かれる

下のボタンを押すと、ひとかたまりに見えていた指示と道具が、本体ループ・サブエージェント・道具の三つに畳み直ります。中身は同じで、並べ替えているだけです。

いまは 平ら:ぜんぶが一かたまりに見えています。

指示も道具も、役割の区別なく一面に広がっている状態です。

本体ループMain loop

こちらと話し、次に何をするかを決め続ける芯。ここが中心で、必要に応じて下の二つを呼びます。

  • 頼みを受け取る
  • 次の一手を決める
  • 道具を選んで使う
  • 担当に仕事を振る

サブエージェントSubagents

役割ごとに別の指示で動く担当。本体が「これはこの役に任せよう」と仕事を振り、終わると結果だけ返します。

  • 探す(Explore)
  • 計画する(Plan)
  • 下調べ
  • 裏で長く回す
  • とりまとめ

担当の顔ぶれは版で増減します。変わらないのは「一人で抱えず、役で分ける」という形です。

道具Tools · 27

実際に手を動かす部品。一つずつに「いつ・どう使うか」の説明書が付いていて、本体も担当も、それを読んでから使います。

  • ファイルを読む
  • 書く(Write)
  • コマンド(Bash)
  • 作業リスト(TodoWrite)
  • ウェブ取得(WebFetch)
  • 検索
  • ブラウザ操作

ここに出したのは一部で、説明書はぜんぶで27個。指示の多くは、この道具と担当の使い分けの細目です。

What each part does

芯が一つ、担当が数人、道具が27

机に向かう人が一人のアシスタントに話しかけているが、そのアシスタントの姿は、役割の違う小さな働き手が寄り集まってできている。外から見るとひとり、中は分業のチーム。
話しかける相手はひとり。中は、役割で分かれたチーム。

三つは、上下ではなく役割の違いです。本体ループは、こちらの頼みを受けて「次に何をするか」を決め続ける芯。賢さの多くは、どの道具をどの順で使うかの判断に宿ります。サブエージェントは、コードを探す・段取りを立てるといった役を引き受ける担当で、本体が重い仕事を切り出して任せます。一人で抱え込まないための分け方です。

そして道具は、手を動かす部品です。面白いのは、道具そのものより、一つずつに「いつ・どう使うか」の説明書が付いていること。本体も担当も、その説明書を読んでから道具を握ります。つまり指示の多くは、新しい能力ではなく、手持ちの力を取り違えないための使い分けの取り決めです。

How the loop runs

どう動いているのか、もう少し近づく

三つの関係を、動かしながら見るとこうです。あなたが頼むと、まず本体ループが受け取り、「次にやることは何か」をひとつだけ決めます。決めたら、自分で道具を握るか、重ければ担当に切り出すか。手を動かして結果を見て、また「次の一手」を決める。この小さな往復を、用が済むまで繰り返します。

担当に振るときは、本体が「これはこの役に」と仕事を渡し、担当は自分用の指示で動いて、終わると結果だけを返します。途中の散らかりは持ち帰らせない。だから本体の手元は、次の判断に集中できる状態に保たれます。

道具を使うときは、握る前にその道具の説明書——「いつ使う・どう渡す・何をしない」——を読んでから動きます。速さより、取り違えない正確さが先。一手ごとに、決める・選ぶ・説明書を読む・動かす・確かめる。賢く見えるふるまいの正体は、この地味な反復です。

It grows by diffs

並んでいるのは、うまいプロンプトではない

文書化された指示は、少し前の350から大きく広がり、いまが最も網羅的とされています。版ごとの差分も追えます。並んでいるものを読むと、その中身は魔法のような一文ではありません。多くは、道具の使い方の注意書きや、どの担当に何を振るかの条件——分業の細目です。能力を一つ天才的に書き直すより、誰がどの道具をどう使うかを、細かく決めている。

記録された指示(v2.1.191 / 2026-06-24)515(350から拡充)
道具の説明書27
追える版(v2.0.14 以降)219

数は版で動きます。見るべきは向きで、賢さを一点に込めるのではなく、分業を細かくする方向に厚くなっています。だから「何個できるか」より「どこがどう分かれているか」を見るほうが、変化の中身がつかめます。

Hints show through

使い方のヒントは、中に透けて見える

ここまで来ると、面白いことに気づきます。この指示の束そのものが、うまい頼み方の見本になっている。道具の一つずつに「いつ・どう使うか」が添えられ、仕事は役割で分けられ、順番が決められている。要するに、何をどう渡すと動くのかが、Claude Code が自分にかけている指示に、そのまま書いてあるわけです。

だから、思うように動かないときに「もっとうまいプロンプト」を探しにいく前に、実物を読むほうが早い。効く言い回しは、こちらが当てにいくものではなく、一次資料に透けて見えています。担当の割り振りや道具選びは中に任せて、こちらは、その見本にならって何を・どの順で渡すかをはっきりさせる。それだけで、ずいぶん変わります。

Source

中身そのものを見たいとき

三つの分かれ方も、道具27個の説明書も、版ごとの差分も、公開リポジトリにそのまま並んでいます。推測ではなく、実際に動いている指示そのものを、自分の目で読めます。新しい事実を足したわけではなく、平らに見えていた中身を役割で置き直しただけ。ライセンスは MIT で、誰でも中を開けます。

In closing

話せば一人、開けばチーム

話しかけると一人の優秀な相手に見えて、中を開けば、本体ループと担当と27個の道具が、一手ずつ決めながら動く分業です。最近のAIエージェントは、Claude Code にかぎらずこの形に向かっています。面白いのは、その指示の束が、うまい頼み方の見本にもなっていること。効く呪文を探すより、Claude Code が自分にかけている指示を読むほうが早い——それが公開されていて、気になれば、自分で開けます。